ユーザーマニュアル - F=ma物理エンジン搭載アップワード・エキスパンダー
EVERTONE EXPANDERは、物理法則F=ma(力=質量×加速度)を音響処理に応用した革新的なアップワード・エキスパンダーです。従来のデジタル処理とは一線を画し、運動方程式による自然なダイナミクス制御を実現しています。
本プラグインの最大の特徴は、F=maの運動方程式を基にした物理演算エンジンです。音響信号を質量として扱い、加速度成分を電気エネルギー変換に応用することで、従来にない自然で音楽的なエキスパンション効果を生み出します。
マイクを使って音を録音する以上、録音された信号はトランジェントに本来含まれる加速度が減衰または消失した状態で録音されます。加速度を失った信号はスピーカーを十分に駆動させることができず、平面的な音像やピーク周波数の発生やマスキング現象を起こす要因となります。
EVERTONE EXPANDERは録音物に本来あるべきトランジェントの加速度を自然な形で取り戻すことを可能にし、サウンド処理におけるピークやマスキングの問題を大幅に改善し、サウンドを立体的にするトランジェントの棲み分けを容易にします。
4つの物理モードが用意されており、それぞれ異なる加速度特性を持ちます:
標準的なエキスパンション
低加速度による繊細で控えめな拡張効果
中加速度によるバランス型、汎用性の高い設定
高加速度による強力でダイナミックな拡張効果
エキスパンションが開始される音量レベルを設定します。この値を上回る信号に対してエキスパンション効果が適用されます。
拡張の強度を決定します。値が大きいほど、エキスパンション効果が強くなり、ピークレベルでの保持時間が長くなる特性があります。
信号が閾値を超えた際の応答速度を制御します。短い値では瞬時に反応し、長い値では緩やかに動作します。
信号が閾値を下回った際の戻り時間を設定します。音楽的な余韻をコントロールするために重要なパラメータです。
ピークホールド機能です。一定時間ピークレベルを保持することで、音楽的なダイナミクス変化を実現します。スライダーを絞り切り、0値でHold Bypassを有効にできます。
閾値周辺での動作の滑らかさを調整します。値が小さいほどハードニーに、値が大きいほどソフトニーとなります。
最大拡張幅を制限します。極端な拡張を防ぎ、実用的な範囲での動作を保証します。
物理法則に準拠した非常にナチュラルなエキスパンダー動作により「録音時に失われたダイナミクスを自然な形で甦らせる」ことを主眼とした本プラグインの独自モードです。
推奨設定: FORCE 1.00, DAMPING 1, HOLD 0 が純粋な物理法則設定となります。
物理演算における「力」の強度を制御し、ダイナミクス処理における加速度の概念を積極的に加えることを可能にします。
物理系の減衰特性を制御します。1では通常の減衰、1000では瞬間的なカットオフ効果を得られます。この極端な範囲により、従来不可能だった特殊なダイナミクス効果が実現可能です。
EVERTONE EXPANDERはBPM SYNCがオフの状態でもプラグイン内でDAWのBPMを把握しており、画面右上にBPMが表示されます。NOTE GRID機能によりATTACK、HOLD、RELEASEのスライダーをノートグリッドに基づいたステップ式の制御に変更できます。
ATTACK、HOLD、RELEASEの3つのタイミングパラメータを統合制御します。隣接する基準音符の音符グリッドに対して±100%までの割合で調整が可能です。
EVERTONE EXPANDERの中央に配置された波形表示画面では、入力信号をリアルタイムで視覚的に確認できます。この波形ディスプレイは単なる表示機能ではなく、エキスパンション処理の効果を直感的に把握するための重要なツールです。
出力カーブ可視化: 実際のアウトプットのカーブをグリーンのラインで描画します。
CLAMP/FREE: 波形表示ウィンドウの下部から各カーブがはみ出ないように視覚的にクランプします。FREE時は波形がウィンドウの外まで描画される事があります。波形の視認について目的に応じて選択してください。
DRY/WET対応の出力カーブとエフェクトカーブ: MIXの値でグラフィカルに波形の状態がわかる出力カーブを搭載。MIX0%とMIX100%でトランジェント、エンベロープカーブを視認出来ます。各カーブは波形表示ウィンドウ右下からビジュアル表示のオンオフが出来ます。
DEEPアラート: THRESHOLDが-30dbを超えるとスライダーノブにDEEPの文字と深度に対応したイエローグラデーションに変化し、-45dbを超えるとノブとスライダーが赤色に変化してお知らせします。特にエキスパンダーではかかりが深すぎるとフェードイン感が出るのでTHRESHOLDが深すぎる事を認知し、DRY信号を混ぜるかTHRESHOLDを緩めて調整してください。
波形表示画面をクリックすると波形表示を一時停止し、カーブを観察できます。MIXノブでDRY/WETの比較や段階変化も観察できます。
トランジェントデザインの確実な監視と確認を行うため活用してください。
EVERTONE EXPANDERでは波形表示ウィンドウでマウスホイールを操作すると緑の線のY軸が動きます。
オシロスコープのよう画面外まで動くオマケ機能ですが、波形の端を見やすくするキャリブレーションに使えます。
※緑の線をダブルクリックでデフォルト位置に戻ります。
信号フローの各段階でのレベル調整が可能です。
出力のクリップ時にはアウトプットノブの色が変わって知らせます。
入出力レベルを自動的に分析し、適切なレベル補正を補助します。約5秒間動作してWETTRIMを最適値に調整します。
本プラグインは積極的なダイナミクスのデザインを行いますので補正は最低限にとどめています。
ドライ信号とウェット信号の比率を調整し、積極的なデザインから補強の範囲まで希望の結果へのアジャストを補助します。
X4オーバーサンプリングにより、エイリアシング歪みを削減します。
突然のゲイン変化によるフェードイン効果やクリップを防止します。ゲイン変化を自動検知し、不自然な音量変化を抑制します。設定値0でオフとなります。
エフェクト全体を瞬時に無効化できます。
RANGEの増加とOUTPUTの減少をリンクさせます。
EVERTONE EXPANDERは全てのミュージシャン、エンジニアに真の自由をもたらします。
同時に、運動エネルギーと電気エネルギーの相互変換時に加速度を保持するという夢のような技術を実現したエレキギター、ベース用ピックアップがEVERTONE PICKUPとなります。
周波数ベースの常識は周波数発生の元となるエネルギーベースの常識へと急速に変化しています。
今後もEVERTONE PROJECTの製品をよろしくお願いいたします。