EVERTONE EXPANDER

ユーザーマニュアル - F=ma物理エンジン搭載アップワード・エキスパンダー

EVERTONE EXPANDER V3.2


1. はじめに

EVERTONE EXPANDERは、物理法則F=ma(力=質量×加速度)を音響処理に応用した革新的なアップワード・エキスパンダーです。従来のデジタル処理とは一線を画し、運動方程式による自然なダイナミクス制御を実現しています。


2. 物理エンジンの特徴

本プラグインの最大の特徴は、F=maの運動方程式を基にした物理演算エンジンです。音響信号を質量として扱い、加速度成分を電気エネルギー変換に応用することで、従来にない自然で音楽的なエキスパンション効果を生み出します。

技術的革新

マイクを使って音を録音する以上、録音された信号はトランジェントに本来含まれる加速度が減衰または消失した状態で録音されます。加速度を失った信号はスピーカーを十分に駆動させることができず、平面的な音像やピーク周波数の発生やマスキング現象を起こす要因となります。

EVERTONE EXPANDERは録音物に本来あるべきトランジェントの加速度を自然な形で取り戻すことを可能にし、サウンド処理におけるピークやマスキングの問題を大幅に改善し、サウンドを立体的にするトランジェントの棲み分けを容易にします。


3. Physics Mode

4つの物理モードが用意されており、それぞれ異なる加速度特性を持ちます:

Standard

標準的なエキスパンション

F=ma Light

低加速度による繊細で控えめな拡張効果

F=ma Medium

中加速度によるバランス型、汎用性の高い設定

F=ma Heavy

高加速度による強力でダイナミックな拡張効果


4. メインパラメータ

基本制御

THRESHOLD

-60.0〜0.0dB

エキスパンションが開始される音量レベルを設定します。この値を上回る信号に対してエキスパンション効果が適用されます。

RATIO

1.0〜20.0:1

拡張の強度を決定します。値が大きいほど、エキスパンション効果が強くなり、ピークレベルでの保持時間が長くなる特性があります。


タイミング制御

ATTACK

0.1〜100.0ms

信号が閾値を超えた際の応答速度を制御します。短い値では瞬時に反応し、長い値では緩やかに動作します。

RELEASE

10.0〜5000.0ms

信号が閾値を下回った際の戻り時間を設定します。音楽的な余韻をコントロールするために重要なパラメータです。

HOLD

0.0〜300.0ms

ピークホールド機能です。一定時間ピークレベルを保持することで、音楽的なダイナミクス変化を実現します。スライダーを絞り切り、0値でHold Bypassを有効にできます。


形状制御

KNEE

0.0〜10.0dB

閾値周辺での動作の滑らかさを調整します。値が小さいほどハードニーに、値が大きいほどソフトニーとなります。

RANGE

0.0〜20.0dB

最大拡張幅を制限します。極端な拡張を防ぎ、実用的な範囲での動作を保証します。


F=ma物理制御モード

物理法則に準拠した非常にナチュラルなエキスパンダー動作により「録音時に失われたダイナミクスを自然な形で甦らせる」ことを主眼とした本プラグインの独自モードです。

推奨設定: FORCE 1.00, DAMPING 1, HOLD 0 が純粋な物理法則設定となります。


FORCE(力の制御)

0.1〜20.0

物理演算における「力」の強度を制御し、ダイナミクス処理における加速度の概念を積極的に加えることを可能にします。

  • 低い値(0.1〜2.0): 繊細で自然な動作
  • 中間値(2.0〜10.0): 積極的なエキスパンション
  • 高い値(10.0〜20.0): 大きなダイナミクス変化

DAMPING(減衰制御)

1〜1000

物理系の減衰特性を制御します。1では通常の減衰、1000では瞬間的なカットオフ効果を得られます。この極端な範囲により、従来不可能だった特殊なダイナミクス効果が実現可能です。


5. BPM同期システム

ASSIST機能

NORMAL/ADVANCED

BPMに対して推奨される有効なパラメータ値をNORMALかADVANCEDの2種から選べます。どちらかを選択するとATTACK,HOLD,RELEASEのパラメータ値がNORMAL(青)またはADVANCED(赤)設定の推奨値になります。この機能によりワークフローが劇的に効果的かつ音楽的なものとなります。


NOTE GRID機能

EVERTONE EXPANDERはBPM SYNCがオフの状態でもプラグイン内でDAWのBPMを把握しており、画面右上にBPMが表示されます。NOTE GRID機能によりATTACK、HOLD、RELEASEのスライダーをノートグリッドに基づいたステップ式の制御に変更できます。

D (Dot)
ドット音符のグリッド単位
T (Triplet)
三連符のグリッド単位
音楽的操作
感覚的なタイミング制御

TILT制御

TILT

-100%〜+100%

ATTACK、HOLD、RELEASEの3つのタイミングパラメータを統合制御します。隣接する基準音符の音符グリッドに対して±100%までの割合で調整が可能です。


6. 波形表示画面とメーター機能

リアルタイム波形表示

EVERTONE EXPANDERの中央に配置された波形表示画面では、入力信号をリアルタイムで視覚的に確認できます。この波形ディスプレイは単なる表示機能ではなく、エキスパンション処理の効果を直感的に把握するための重要なツールです。

入力波形
実際の音声信号を黄色で表示
処理後波形
処理適用後の結果を表示
リアルタイム更新
再生中の変化を即座に反映
ダイナミクス可視化
効果の強度を視覚的に確認

出力カーブ可視化: 実際のアウトプットのカーブをグリーンのラインで描画します。


CLAMP/FREE: 波形表示ウィンドウの下部から各カーブがはみ出ないように視覚的にクランプします。FREE時は波形がウィンドウの外まで描画される事があります。波形の視認について目的に応じて選択してください。


DRY/WET対応の出力カーブとエフェクトカーブ: MIXの値でグラフィカルに波形の状態がわかる出力カーブを搭載。MIX0%とMIX100%でトランジェント、エンベロープカーブを視認出来ます。各カーブは波形表示ウィンドウ右下からビジュアル表示のオンオフが出来ます。


DEEPアラート: THRESHOLDが-30dbを超えるとスライダーノブにDEEPの文字と深度に対応したイエローグラデーションに変化し、-45dbを超えるとノブとスライダーが赤色に変化してお知らせします。特にエキスパンダーではかかりが深すぎるとフェードイン感が出るのでTHRESHOLDが深すぎる事を認知し、DRY信号を混ぜるかTHRESHOLDを緩めて調整してください。


操作のコツ

波形表示画面をクリックすると波形表示を一時停止し、カーブを観察できます。MIXノブでDRY/WETの比較や段階変化も観察できます。
トランジェントデザインの確実な監視と確認を行うため活用してください。


オマケ

EVERTONE EXPANDERでは波形表示ウィンドウでマウスホイールを操作すると緑の線のY軸が動きます。
オシロスコープのよう画面外まで動くオマケ機能ですが、波形の端を見やすくするキャリブレーションに使えます。
※緑の線をダブルクリックでデフォルト位置に戻ります。


メーター機能

インプットメーター(左側)

  • INPUT表示:現在の入力レベルをリアルタイム表示
  • レベル値:デシベル(dB)単位での数値表示
  • ピークホールド:瞬間的なピーク値を保持表示(数値枠クリックでオンオフ)
  • 適正レベル確認:THRESHOLDパラメータとの関係を把握

ゲインメーター(右側)

  • GAIN表示:リアルタイムのゲイン変化量をデシベル表示
  • エキスパンション量の可視化:アップワード・エキスパンダーとしてのゲイン増加量
  • 動的表示:音声信号に応じて瞬時にゲイン変化を表示
  • 効果確認:設定パラメータによるエキスパンション効果の強さを視覚で確認

7. 安全機能とコントロール

ゲイン・ミックス制御

INPUT/OUTPUT/MAKEUP GAIN

-20〜+20dB

信号フローの各段階でのレベル調整が可能です。

出力のクリップ時にはアウトプットノブの色が変わって知らせます。

AUTO GAIN

入出力レベルを自動的に分析し、適切なレベル補正を補助します。約5秒間動作してWETTRIMを最適値に調整します。

本プラグインは積極的なダイナミクスのデザインを行いますので補正は最低限にとどめています。

MIX

0〜100%

ドライ信号とウェット信号の比率を調整し、積極的なデザインから補強の範囲まで希望の結果へのアジャストを補助します。


追加機能

OVERSAMPLING

Off / X4

X4オーバーサンプリングにより、エイリアシング歪みを削減します。

Safety

0〜100%

突然のゲイン変化によるフェードイン効果やクリップを防止します。ゲイン変化を自動検知し、不自然な音量変化を抑制します。設定値0でオフとなります。

BYPASS

エフェクト全体を瞬時に無効化できます。


RANGE LINK

RANGEの増加とOUTPUTの減少をリンクさせます。


8. 新機能 v2.9.9SF

v2.9.9SFでは、より精密なコントロールを可能にする2つの新機能が追加されました。

HPF: サイドチェインハイパスフィルター

0〜300Hz

300Hzまで対応するサイドチェインハイパスフィルターです。

低域の強いエネルギーによる動作を避けつつエキスパンダーを狙いのタイミングで動作させ、深くスレッショルドを下げる際などに期待しないリトリガーを防ぎます。

STB: スタビリティコントロール

0〜100

積極的なサウンドメイクをする際に、勢いによる良さを細かいパラメータ調整で修正するのは非効率で創造的ではありません。

暴れる挙動に対しては複数のパラメータをワンノブで制御しながら安定性を保つように作用するスタビリティコントロールを活用してください。0-100の範囲で制動の安定をサポートします。


9. V3.0 追加新機能

V3.0では、UIデザインが一新され、新しい機能が追加されました。

UIデザインの一新

UIデザインが新しくなり、リアルな使用感のあるUIモードが搭載されました。

実際によく触る箇所が強く汚れているので、製品を操作する上でのヒントにしてください。

また、ヘッダー左上のCLEAN UPボタンで汚れを拭き去り新品状態にできます。

新品UIの時にはWELL-USED表記となり、これをクリックすると使用感のあるUIに切り替わります。

GLOWボタン

波形表示ウィンドウ内にGLOWボタンを配置しました。

波形表示ウィンドウのデザインが落ち着きましたが、GLOWボタンを押すとバックパネルが明るくなります。


10. V3.1 新機能

V3.1ではより高度な自動調整機能とKNEEコントロールのガイド機能が追加されました。

AUTO THRESHOLD

オートスレッショルド機能。

RANGEで設定した値にゲイン変化量が近くなるようにTHRESHOLDを自動調整。

調整完了後にAUTOGAIN調整までを一連の流れとして処理します。

INTELLIGENCE AUTO

RANGEで設定した値にゲイン変化量が近くなるようにTHRESHOLDを自動調整しつつ、必要に応じてRATIOも自動調整。

調整完了後にAUTOGAIN調整までを一連の流れとして処理します。

KNEEグローライト

KNEEノブの中央をダブルクリックでKNEEノブがプッシュプルノブとしてポップアップ。

パラメータ設定が設計上最適なレンジに入ると、KNEEを効果的にコントロールできる状態にある事をアークライトの光で知らせます。

再度ノブの中央をダブルクリックで通常表示に変わります。

KNEEコントロールガイド

反時計回り(値を下げる):ハードニーとなり、ピークに至るまでの発音が速くなります。

時計回り(値を上げる):ピークに至るまでの発音が遅くなります。

適切な状態で操作する事でバスドラム、スネア、ベース、ボーカル、パーカッション、ピアノ、ギター、あらゆる素材の前後感を自在にコントロールできます。

11. V3.2 新機能

V3.2では先読み機能が追加され、よりナチュラルな処理とハードなアプローチの両方に対応できるようになりました。

LOOKAHEAD

先読み機能搭載でよりナチュラルな処理に対応。

LOOKAHEADオン時にはレイテンシーが発生し、オフ時はゼロレイテンシーです。

ハードなセッティングでもロック向けのプロセッシング感のあるアプローチと、モダンでナチュラルなアプローチといったサウンドキャラクターの棲み分けが可能になりました!

12. V3.3 新機能

V3.3では画面描画負荷の低減とECO表示モードを実装しました。

画面描画負荷の低減

今回の負荷低減に加えてECOモードでは波形表示の描画負荷をさらに低減します。

使用環境や同時表示窓数に応じてご使用ください。

13. V3.3.2 新機能

V3.3.2では以下の改善を行いました。

KNEE GLOWをデフォルトでオンに変更

KNEE GLOWがデフォルトでオンになりました。

プリセット「FORCE for BUS and MASTER ADV」を追加

バスやマスター向け、マスタリングにも使用できるプリセットを追加しました。

Windows環境での環境互換対策を強化

Windows環境での互換性を改善しました。

14. V3.3.4 修正

V3.3.4では以下の修正を行いました。

FL STUDIOでのバス選択を修正

FL STUDIOで優先してステレオバスが選択されるように修正しました。

15. EVERTONE PROJECT

EVERTONE EXPANDERは全てのミュージシャン、エンジニアに真の自由をもたらします。

同時に、運動エネルギーと電気エネルギーの相互変換時に加速度を保持するという夢のような技術を実現したエレキギター、ベース用ピックアップがEVERTONE PICKUPとなります。

周波数ベースの常識は周波数発生の元となるエネルギーベースの常識へと急速に変化しています。

今後もEVERTONE PROJECTの製品をよろしくお願いいたします。